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成人病や現代病に悩むいまの社会にとって、まさに福音ともいえそうな存在だ。 そしてご紹介したように、Iさんの研究では、このカルシウムが食品添加物として食品保存にも効果を発揮するという。

たとえば肉類。 これにカルシウムを使うと、日もちがよくなるうえに、安くて固い肉でも柔らかくなり、自然にカルシウムの摂取量も増えていく、そんな一石三烏の食品添加物だということなのだが。
はたしてそんなことが本当にあるのだろうか。 そもそも、カルシウムといえばアルカリ性。
食品の保存は酸性にして、という話は聞くが、アルカリ性にして日もちさせるなんていう話は聞いたこともない。 「きっかけはユーザーの声だったんですよ。
あるメーカーに『おたくのカルシウムを使うと、どうして日もちがよくなるんですか?』ってね。 それでメーカーの担当の方が、さっぱりわけがわからない、と私どものところに相談にみえたのが始まりなんです。
確かにいまは、保存料を使わずに保存性を上げるには、その食品を酸性にする、というやり方が主流です。 教科書にもそう書いてありますからね。
それで、この話がもち込まれたときに、学問的にいろいろ考えてみたんですが、アルカリにして悪いという理由はじつはどこにもないんですよ。 いままでは、みなさん教科書にそうあるから酸性にしていただけなんですね」日本人のカルシウム不足を補うために注目されていたカルシウムに、こうして新たな価値がみえてきた。
とはいえ、カルシウムなら何でもいいというわけでもないらしい。 研究を進めていくうちに行き着いたのが、天然カキ殻カルシウムだとか。

「焼いたカキ殻を入れると、食品は確かにアルカリ性になります。 さまざまな食品で実験しましたが、日もちの面ではいい効果が出ました。
それも不思議なことに、カキ殻カルシウムの主成分である水酸化カルシウムだと、じつに長もちするんです。 天然のものだけに、細かく調べていくとカルシウム以外にもマグネシウムなどさまざまな成分が入っているんですが、おそらくそれがいいんじゃないかと。
ただ、いま一生懸命調べているところなんですが、まだよくわからない部分も多くて……」効果のほうはすでに実証ずみだ。 たとえば、ポテトサラダを使った実験では、10度の気温条件下で天然カキ殻カルシウムを0.3%添加したものと、そうでないものに、それぞれ食中毒菌を植えつける。
2日後には、カルシウムを含まないほうのポテトサラダの食中毒菌は、1グラム中100万個ほどに増えていた。 これは確実に食中毒をひき起こす数である。
一方、カルシウムを添加したほうの食中毒菌は増えていなかった。 ポテトサラダなら、天然カキ殻カルシウムを使えば賞味期間が一週間程度には伸びるはずだという。
「ただし、カルシウムを使ってアルカリ性にすると、若干色や味が変わってくるんですよ。 『イメージが悪いからどうも…」という声もあるんですが、おもしろいのは『カルシウムを使った新製品です、日もちもします、健康にもいいです』と、従来品よりも値段を高くして売っている業者の方もあるらしいんです」いやはや、たくましい商魂だ。
もっとも、値段が高いほうが効果があるように感じてしまうのもまた消費者心理。 カルシウム製品の普及につながるのならば、それもよし、なのかもしれない。
「もう一つ南北の大きな違いは、『保存』に対する考え方です。 北のほうは天候に左右されやすくて、たとえば草原が枯れてしまったら、それを食べる動物も死んでしまいます。
ですから、とれるときにとって保存しておこうという発想。 一方南は、食糧には恵まれているが暑くて腐りやすいので、作り置きをせず、そのつど作って食べるというわけです」だから北の台所では、動物をさばいて塩漬けにしたり、野菜を瓶詰にするための作業空間という性格が強く、スペースも広い。

南は極端な話、石3つで台所のできあがりである。 台所の様式は世界共通ではない。
その地域の食生活のスタイルによって異なるのだが、そのもととなるのが気候。 北と南では決定的な違いがあるという。
「ポイントは火です。 寒いところにとって火は調理のためという前に、暖房や灯のためにありました。
逆に暖かいところでは、調理のときくらいしか必要ありません。 根本的な違いは、そこから生まれたのだと思います」世界の台所に多大な関心を寄せ、研究を続けるMさんは、その南北の境界線を北極と赤道のちょうど真ん中くらい、北緯40度から43度のあたりとしている。
台所は北緯40度でかわるところで、日本での南北の境界線はというと、鍋を置くか吊るすかという違いで見てとれるという。 「かまどに鍋を置いて調理するのは南。
暖房のためにいつでも火のついた囲炉裏の上で、調理をしてしまおうというのが北の考え方なのです」日本で北緯40度といえば秋田あたりだが、日本における境界線はもう少し下がって、中部山地から新潟を経て、北茨城に抜けるラインだという。 囲炉裏といえば、雪の中の合掌造りの家を思い浮かべる人もいると思うが、おもしろいのは、同じ合掌造りの村でも、富山県の5箇山は鍋を吊るす囲炉裏派で、山一つ隔てた岐阜県白川郷は、鍋を置くかまど派だという。
「一方は中部山地の文化、もう一方は京都の文化が反映した結果でしょう」では今度は、日本の台所には欠かすことのできない「お釜」の歴史を通して、台所の違いをみてみよう。 昔はごはんを炊くのも何でも、鍋を利用していた。

が、昭和3年に羽釜(つばのついたごはん炊き専用の釜)が登場。 それにともない、米を多く食べていた関西ではかまどが普及した。
「それに対して、関東の北部は雑穀がおもでした。 うどんなどはやはりお鍋でぐつぐつ煮るほうがおいしいのです。
ですから、関西に比べると羽釜の普及は遅かったですね。 ところが、囲炉裏は鍋がふいても火を止めるわけにいかないでしょう。
火加減を調節するには持ち上げたり、横によけたりしなくてはいけません。 重くてたいへんだったのです」早くかまどにしたいということから、関東でも第2次世界大戦後に羽釜が徐々に普及。
そして昭和4十年頃、日本の台所に一大革命をもたらした電気釜が登場する。 「おもしろいことに、電気釜は北から広まっていったのです。
東北地方では、まだ羽釜が入ってこないうちに電気釜になった例もあります。 西のほうはかまどに対するこだわりが強かったのでしょう」台所はあるときは必要に迫られ、そしてあるときは時代の流れを敏感に受け止めながら変化してきた。
「台所というハード面はめざましく進歩しました。 しかし食習慣というソフト面は、案外変わっていないと思います。
というのも、日本では基本的に、一日3度の食事を作るでしょう。 それは昔から変わっていません。

ですから、よくいえば活気があるのですが、台所はいつもゴチャゴチャしているのです」対してヨーロッパでは、一日にまともに料理を作るのは一度きり。 汚れないから、台所はいつもきれいだという。
「夫婦が共働きで、子どもは学校給食となると、まともに作るのは土曜日だけということも珍しくありません。 ですからもう、ピカピカにきれいなのです」しかし日本で同じようなことをすれば、ただの手抜きといわれてしまう。
「日本では、食事のたびに冷凍食品というわけにはいきません。

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